なぞの雪と氷 〜科学であそぼ「おもしろ実験室」〜


「ほくでん」が運営している施設、科学であそぼ「おもしろ実験室」を見学してきました。もともとは研究所だったのですが、子供達に理科や科学に親しんでもらおうと、平成7年から、実験室を始めたそうです。

  • 科学であそぼ「おもしろ実験室」(撮影:2006/02/12)


本格的な5つの実験室と、パソコンや面白い玩具(おもちゃ)、理科や科学の本が3,500冊もそろっているコーナーもあります。

  • 受付の近く「だいちの広場」。本がたくさん見えますね(撮影:2006/02/12)


教室には、数回じっくり実験に通う「定期コース」やテーマをしぼった「1日教室」のほかに、申し込みのいらない教室や行事もあります。「1日教室」の一つ、科学の専門家の先生が教えてくださる「1Dayサイエンスワークショップ」が2月12日にありました。先生は前野 紀一さんで、テーマは「雪と氷のおもしろ世界」です。

  • 実験の始まりです。 豆科学者30数名が実験室へ(撮影:2006/02/12)

2月12日の「雪と氷のおもしろ世界」の実験のメニュー

  1. 氷を釣ろう*1
  2. マイナスの温度を作ってみよう*2
  3. 過冷却(かれいきゃく)のふしぎ*3
  4. ダイヤモンドダストを作ってみよう*4
  5. 雪結晶の成長を観察しよう*5
  6. 氷のネガティブ・クリスタル(負の結晶)*6

どんな実験なのかな?その中の一つを図で、ご紹介しましょう。

  • 「氷を釣ろう」の実験のイメージ


実験のお手伝いは、専任の 古川 崇 先生の他に、たくさんのスタッフの人達です。

  • 「うみの実験室」で実験中。立っているのが古川先生 (撮影:2006/02/12)


見学のお母さんは「クチコミで知って子供が5年生の時、応募したのがきっかけです。6年生になって、定期コースに通っています。」
豆科学者の一人は「学校では本格的な実験が少ないので、やっていて面白いよ。」とのことです。

  • 「うちゅうの大実験室」にあった興味をそそられるソーラーカー(撮影:2006/02/12)


ほくでん 科学塾グループリーダー 佐坂 卓史さんにも、お話を伺いました。
年間で約160回の実験教室を開いていて、実験の内容は小・中学生が行う理科の、ほとんど全てを行っています。会員になって申し込みをしてもらい人数が多い時は抽選になる教室と、事前申し込みのいらない教室の2つのパターンがあります。会員になると教室の案内が必ず届き、科学の本が借りられます。教室のある日は、送迎バスも運行されます。また、夏休みなどでは、星空の観察など、屋外教室も行います。ほかに、札幌以外の地方への出前実験室も行っています。

【住所】
科学であそぼ「おもしろ実験室」札幌市東区苗穂町1丁目1−20

【公式サイト】
http://www.hepco.co.jp/omoshiro/

【取材協力】
北海道電力株式会社  佐坂 卓史 様   古川 崇 様

※2006/02/12 テーマの「雪と氷のおもしろ世界」の準備をしている前野先生。

  • 北海道大学 理学博士 前野紀一 名誉教授 (撮影:2006/02/12)


「北国の生活で身近に有る雪と氷に、普段、気が付かない科学を再発見して欲しいです。」 (コメント2006/01/28)
【参考図書】
「新版 氷の科学」前野紀一著、 北大出版会 2004年
「雪と氷の事典」日本雪氷学会監修、 朝倉書店、2005年

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『雪は天から送られた手紙である』の言葉を遺し、北大で世界初の人工雪を作り出した中谷博士に興味のお持ちの方は、「中谷宇吉郎 雪の科学館」
http://www.city.kaga.ishikawa.jp/yuki/

「ティンダルの氷花」「アイスフラワー」「負の結晶」などと呼ばれている「ティンダル像(チンダル像)」は、ティンダルと言う人が、1855年にスイスのアルプス湖の氷の中で発見したことから、このような名前で呼ばれます。本格的な研究は、中谷博士により始められました。

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子供達には楽しい雪ですが、大人には厄介な雪。雪道、街中のツルツル・テロテロ道路に撒く凍結防止剤の塩(塩化カルシウムなど)は、未来の公害にはならないかと、ちょっと心配なのですが、凍りにくくするためですよね。
水の性質として水が氷になる時、自由に動いていた水の分子は、温度が低くなるにつれて、0℃で凍り、規則正しく整列した水の分子(氷)になるのは、以前にご紹介しました。
「さっぽろサイエンス観光マップ」2005-12-24 札幌市水道記念館 (氷は水より大きい) を参照。
http://d.hatena.ne.jp/costep_webteam/20051224


水に塩などの異物が混ざると、0℃では凍ることができず、なかなか氷になりません。それは、「凝固点降下」により、塩入りの水は純粋な水よりも、氷になる温度=融点が低くなるためです。氷になりにくい=凍りにくい=凍結防止ですね。環境にやさしい凍結防止剤が普及するとよいですが。
(撮影・文・図:荒瀬 美由紀)最終更新:2006/03/16 Ver 1.0

オマケ

  • 「ネガティブ・クリスタル(ティンダルの氷花)」(撮影:2006/03/05)

*1:【氷釣り】氷に塩をかけると、氷の表面の水で塩が溶け、氷の中の温度が下がります。これを「氷点降下」と言います。そこに濡れた糸を置くと、その水が凍って氷にくっつき、氷が釣れるのです。砂糖や小麦粉では、どうなのでしょうか?ためしてください。

*2:【マイナスの温度】雪に塩を混ぜて(ヘラでサクッと混ぜましょう)、温度計で1分毎に5分間、温度を測り、だんだん温度が下がっていく様子を観察しました。−21.5℃位まで、温度が下がりました。本当(理論上)は、−23℃まで下がることになっています。

*3:過冷却】普通、水は、0℃で氷になりますが、静かに冷やしていけば、0℃以下になっても凍らずに水のままの時があります。この状態のことを「過冷却」と言います。水の状態で−6℃〜−7℃まで温度が下がり、その後、瞬時にして氷となります。(過冷却の状態で、軽い衝撃を与えても、瞬時に凍る様子が観察できます。)水のほかに、ジュース・ウーロン茶・牛乳も実験しました。水との違いを、観察しましょう。

*4:【氷晶(ダイヤモンドダスト)】ジュースの空き缶(飲み口の方を開けた缶なので、切り口が鋭いですので、テープ等を張ります)をドライアイスで冷やし、缶に息(水蒸気)を吹き込むと、缶の中に入った空気が冷やされて雲ができます。その中でエアキャップ(梱包材のプチプチ)をつぶすと、勢い良く飛び出した空気の温度が急激に下がります。このときに過冷却状態だった雲粒が一瞬でダイヤモンドダスト(氷晶)になります。懐中電灯の光を当てると、キラキラ輝くダイヤモンドダストを観察することができます。

*5:【雪の結晶】自然の中で、大気上空で雪の結晶が成長するのに必要な条件は、氷点下の環境と凝結核と過飽和水蒸気です。屋内の実験用に、これらの条件を簡単にそろえるには、ペットボトルの中に釣り糸を垂らし、息(水蒸気)を吹き込み、ペットボトルの下部をドライアイスで冷やします。10分〜20分ほど静かに待つと、釣り糸を核に雪の結晶が成長します。実験にも使われた「平松式ペットボトル人工雪発生装置」とは?http://users.eolas-net.ne.jp/saebou/kazupage/pet.htm

*6:【負の結晶(ネガティブ・クリスタル)】氷に強い光を当て、氷をプロジェクターに映しながら、観察しました。強い光のエネルギーによって、氷の表面が融けてできるのではなく、氷の内部が円盤状に融け、氷に包み込まれた水がつくり出す模様です。雪の結晶に似た「ティンダルの氷花」などと呼ばれます。氷の内部の空洞は空気が入っていないので「真空の泡」と言うそうです。天然の氷(北国では、水を外で凍らせて作った氷)の方が観察しやすいです。プロジェクターが無くても、太陽に氷をかざして観察する事ができます。