下水道は縁の下の力持ちでゲス 〜札幌市下水道科学館〜


今回は札幌市下水道科学館(以下、下水道科学館)をご紹介します。


 下水道科学館は国道231号線沿いの創成川下水処理場の隣にあります。駐車場も設置されていますが、地下鉄麻生駅から徒歩15分程度ですので、散歩がてら見学するのにちょうど良い場所です。


 下水道科学館は下水道事業を市民に理解してもらうため、1997年(平成9年)に開館しました。これまでに35万人以上が来館し、現在でも年間約35000人が訪れる隠れた人気スポットです。先日の9月2、3日には「下水道フェスタ」が行われ、2日間で9000人以上の来場者があったそうです。筆者は去年、初めてこのイベントに参加したのですが、下水道見学ツアーに定員オーバーで参加できませんでした。今年は気合十分、朝から参加申込をして見学ツアーに参加してきました。
 常設展示物施設は3Dシアターを含めて20以上あり、すべて無料で見学や利用ができます。札幌市の下水道普及率は95.5%にもなっているのですが、下水道について詳しい方は少ないと思います。筆者も「へー」と思いながら見学しました。下水道については知らない事が思ったよりたくさんあり、大人も十分楽しめる展示内容です。例えば下水道はし尿などの汚水処理だけでなく、雨水の受皿となって洪水対策も担っているのです。


 主な展示施設をいくつか紹介しましょう。

 下水道科学館のメイン展示施設である3Dシアター、「サブマリンアクアツアー」が1階にあります。3D用メガネをかけて見る15分程の映像です。観客は主人公と共に潜水艦に乗って、お風呂の排水口から下水道の旅に出ます。映画の中では下水処理施設も通過するので、下水処理過程も学べるようになっています。



 2階にある、下水処理の各過程を説明する模型「スタディデスク」です。下水処理の各過程が詳しく説明されています。ここで下水処理過程について簡単に紹介します。


 下水処理場に流れ込んできた下水は最初「沈砂池」に入り、大きなゴミや砂が取り除かれます。次に「最初沈殿池」を数時間かけてゆっくり流れ、比重の大きい汚れが取り除かれます。底にたまった汚れは「汚泥」と呼ばれ汚泥処理施設に送られます。次に「反応タンク」で「活性汚泥」という微生物をたくさん含んだ泥を加え、下水中の有機物を微生物に栄養として吸収させます。この時、空気を送り込んで微生物の活動が活発になるようにします。そして「最終沈殿池」をゆっくり流し、汚泥を沈殿させて上澄みを取り出します。この段階で水はかなりきれいになっており、透明度も50cmくらいあります。たまった汚泥は、同じく汚泥処理施設に送られます。



 地下4階では、実際に現在使われている直径5mの「雨水貯留管」を見ることができます。雨の影響などで、水かさが変化します。大雨の後など下水に流れ込む水の量が多い時は、管が満水になってしまい管自体を見ることができなくなります。



 この下水道科学館の設置目的は下水道事業のアピールですから、下水道事業や下水処理過程について展示があるのは当然です。さらに自然環境や水環境等についての展示もあります。1階入口を入ってすぐには、ラワンブキをデザインした4本の柱に、山、森、川、海の自然環境とそれに関わる生物についての映像が流れています。


 ここで我々の使っている水が自然界でどの様に循環しているか考えてみましょう。そして下水道がどのような役割を果たしているか、ちょっと考えてみてください。
 山に雲から雨が降ります。それらの水はやがて川に流れ込みます。その水を汲み上げ、殺菌処理などをして上水道用(水道水)に利用します。使用した水やし尿は下水道管に流します。また雨水も下水道管に流れ込みます。これらを下水道処理施設で処理し、きれいになった水は海や川に流されます。水はやがて蒸発し、雲になって、また山に雨が降るという、循環が成り立っているのです。


 では下水処理によってどれくらい水がきれいになっているのでしょうか?水の汚れを表す指標の1つに、BOD(生物化学的酸素要求量)というものがあります。下水の主な汚れはし尿などの有機物であることから、微生物が有機物を分解するのに必要な酸素の量を水の汚れの指標としています。下水処理施設に流入する汚水のBODは200〜250くらいだそうです。それが下水処理によってBODが5程度にまで下がるそうです。ちなみに水質基準では20が上限です。ところで最近は日本人の食生活もどんどん肉食に変化しているからか、流入する下水のBODが増加しているそうです。下水の水質にはし尿が大きく影響するので、食生活の変化によって、排出されるし尿に有機物が増えている可能性があります。


 下水道の普及により豊平川もきれいになって、サケが戻ってきたそうです。また冬の融雪にも下水道水は利用されています。その他にも、下水処理の過程で発生する汚泥はどのように処分、利用されているか気になりませんか?この答えも下水道科学館にあります。大人もちょっと物知りになれる科学館が、身近にしかも無料で存在します。散歩がてら立ち寄ってみてはいかがでしょうか?


取材協力:札幌市下水道科学館
参考文献:がんばる・ふんばるさっぽろの下水道、札幌市建設局管理部企画課
     札幌市の下水道、札幌市建設局
     私たちの暮らしと下水道、札幌建設局
     雪対策下水道事業、札幌市建設局
(文、写真:ひるあんどーん)
 

住所:札幌市北区麻生町8丁目
開館時間:9:30〜17:00
休館日:月曜日(休日と重なった場合は順次繰り下がり)、祝日の翌日、年末年始(12月29日〜1月3日)
入場料:無料
アクセス:地下鉄麻生駅出口1番、2番から徒歩15分
     中央バス札幌ターミナル発「下水道科学館前」下車徒歩2分
     中央バス麻生ターミナル発「北営業所前」下車徒歩3分
     JR新琴似駅下車徒歩15分
駐車場:有(無料)

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