フィルムでおこる化学反応 〜札幌市写真ライブラリー〜

サッポロファクトリーレンガ館3階には、「札幌市写真ライブラリー」があります。

(2006/9/8 撮影)


ここは、札幌の歴史や風俗を記録した貴重な写真を保存・展示している、写真の史料館です。ここには約3万点の写真資料が納められていて、このうち約1万5千点は写真の検索や複写が無料でできます。収蔵写真を展示する常設展も開催されています。

  • 常設の収蔵写真展

(2006/9/8 撮影)
さらに、ギャラリーを借りることができ、様々な写真展が催されています。貴重な写真資料があることと、広いギャラリーが使えることで、札幌の写真ファンはここに足しげく通います。

  • 写真が飾られ、雑誌等も読める憩いのスペース

(2006/9/8 撮影)


ところで、写真って、どうして写るのでしょうか。この仕組みを、白黒写真を例に考えてみましょう。

■まずはネガをつくろう
カメラにフィルムを入れると、レンズの裏側にフィルムがセットされます。風景(光)は、レンズを通った光として、フィルムに映ります。このことを感光といいます。フィルムには、「ハロゲン化銀」*1という物質の粒子をゼラチンに溶かした水溶液(乳剤)が塗られています。このハロゲン化銀に光が当たると、光のエネルギーによりハロゲン化銀が銀になります。

AgX(ハロゲン化銀)+光→Ag(銀)+X

(Xはハロゲン物質)

光が当たらなかった部分は、粒子が変化せず、ハロゲン化銀のままです。
たくさん光が当たったところはたくさんのハロゲン化銀粒子が銀になるので銀の密度が高くなり、少ししか光があたらなかった部分は銀の密度が低くなります。この、粒子の密度の差で黒色の濃さに違いが出て、グラデーションが生まれます。


感光したフィルムを、現像液と呼ばれる薬品につけると、光の当たった部分のハロゲン物質だけが洗い流され、銀の粒子はフィルムに残ります。*2

この後、フィルムを定着液と呼ばれる薬品につけると、光の当たらなかった部分に残っていたハロゲン化銀が洗い流されます。


こうしてできたものが「ネガ」と呼ばれるものです。
ネガは、実際の風景と白黒が反転しています。
*3


■ネガから写真へ
ネガを専用の機械*4にセットして、写真を作ります。


ここでもう一度光をネガに通します。ネガに光を当て、ネガを通過した光を印画紙と呼ばれる紙に焼き付けます。
印画紙にはネガと同じようにハロゲン化銀*5が塗られています。
銀粒子の密度が濃いほど光は通過しなくなりますから、印画紙に当たる光は弱くなります。密度が低いところはその逆で、光が通過しやすいので印画紙にたくさんの光が当たります。>
この先の反応はネガの場合とほぼ同じです。
印画紙の、光が当たったところには銀粒子が残り、その後洗浄すると当たらなかったところはハロゲン化銀が洗い流されます。
したがって、ネガとは反対、つまり実際の風景と同じ画像が写真になるのです。



■フィルムに一瞬を焼き付けて
フィルムが登場したのは1880年代後半です。この後、写真は一般に広く普及しました。その後さまざまな改良が加えられ、より鮮明に写るフィルムが次々と開発されていきました。
大切な思い出や、感動的な光景をいつまでもとどめておける写真。
その写真は、化学反応の賜物でできあがるのですね。
札幌市写真ライブラリーに展示されている写真からは、昔の札幌の風景とそこに生きた人々の息吹が感じられます。
小さな銀の粒子が、それを伝えてくれています。


【アクセス】

札幌市営地下鉄東西線 バスセンター前下車 8番出口から徒歩7分
【公式サイト】

収蔵写真の検索などが無料でできます。

【参考文献】

  1. 「写真の科学」 田中益男 著
  2. 日本カメラ博物館

(文・写真・図 宮本朋美)
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*1:ハロゲンとは、フッ素、塩素、臭素ヨウ素アスタチンの総称です。

*2:さらに、残った銀粒子の周りには現像液中の粒子が集まり、より大きな粒子になります。

*3:カラーネガフィルムの場合は、青・緑・赤の3原色に反応する粒子がそれぞれあります。そして光に反応したハロゲン化銀は、カプラーと呼ばれる物質とさらに反応を起こして各色の色素(反対の色である補色)を呈します。

*4:引き伸ばし機といいます。大きなカメラ店に売っていることもありますよ。

*5:ネガの場合は臭化銀、印画紙の場合は塩化銀の場合が多いです。