いろいろな昆虫がいるのはどうして?〜札幌市北方自然教育園〜


 札幌市北方自然教育園は、札幌市南区白川の豊平川の北側・硬石山の西側にあります。ここには、約5ヘクタールの敷地に学習館・昆虫館や体験農場や果樹園・観察林などがあり、自然観察や作物の栽培体験などができる施設です。園内にある昆虫館は、240平方メートルあり昆虫に関しての解説展示や生きた昆虫をみることができる生態展示があります。また、学習館には世界中のいろいろな種類の昆虫の標本の展示があり、地球上にさまざまな形をした昆虫がいることがわかります。

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昆虫は地球上で最も多くの種類がいる生物

 地球には多くの種類の生物が暮らしています。しかし、その中でも昆虫は現在知られている生物種の約55%を占めています。しかも、未だに発見されていない種類も多いと推測されていますから、種類から考えてみると地球上で最も繁栄している生き物は昆虫であると考えられます。それでは、どうして昆虫には多くの種類がいるのでしょうか? 昆虫の特徴からその秘密を探ってみましょう。

       

その1:空を飛べる

 今、見つかっている最も古い昆虫の化石は、約4億年前のデボン紀中期のトビムシの化石といわれています。この当時は、まだ翅(はね)がなかったようですが、約3億年前の石炭紀には翅をもった昆虫が出現します。この時代に空を飛ぶことができたのは、昆虫だけだったようです。この時代には、翅を広げた大きさが70cmにも達する巨大トンボもあらわれました。
 鳥やコウモリの羽は手が進化した器官で、骨や筋肉の助けをかりて羽ばたくことができます。それに対して、昆虫の翅は背中の外骨格が薄く伸びたものです。この翅には翅脈(しみゃく)と呼ばれる筋が葉脈のように広がっています。この翅脈は、表側にふくらんだ面と裏側にふくらんだ面がほぼ交互に配列しており、強度を保っています。
 昆虫が空を飛べる秘密は、翅のついている胸部にあります。昆虫の胸部には2種類の筋肉が体壁についています。この筋肉を運動させることによって背中の硬い表皮がくぼんだりふくれたりすることで、翅が上下し飛ぶことができます。空を飛べるようになったことが、昆虫の活動範囲を大きく広げました。

その2:小さなからだ

 昆虫は体の表面が硬くなっており骨の役割をはたしています。このつくりはまるで外から枠をはめたのと同じようなもので、外骨格といわれています。昆虫は、外骨格であるために体を大きくすることができません。それは、体を大きくしていくと、外骨格では体を支えることが出来なくなり、つぶれしまうからです。また、表面を厚く丈夫にすると体が重くなるので、筋肉や内臓などの器官を収納できなくなります。このような理由で、ほとんどの種類の昆虫は、脊椎動物よりも体が小さくなりました。
 しかし、小型の種類が多い昆虫にとってはこの外骨格は、体から水分が蒸発することを防いでくれるという効果があり、陸上生活に適していました。また、小さな体は少ない食料ですみます。ですから、狭い場所にたくさんの昆虫が一緒にくらすことができ、枯れ木の間や樹木など、陸上のさまざまな空間を利用するためには便利だったようです。

その3:植物との共進化

 昆虫にとって植物は、非常に魅力的な食料です。それと共に生活する場所を提供しています。そこで、植物を食料とする昆虫が、たくさん現れたと考えられます。
 しかし、植物も食べられてばかりではなく、「身を守るために葉を硬くする。」「毒のある物質をたくわえる。」などができるものが出てきます。それに対して、昆虫はある特定のグループの植物が持つ毒に強い種類が現れます。このように昆虫が植物が身を守る仕組みを発達させる。するとそれをうち破る技を昆虫が身につけるというようにして、お互いが進化してきたようです。
 また、被子植物は花という器官を持ちました。花の出現は昆虫にとっては、花から蜜という食物を得ることができるというメリットがあり、植物にとっては、昆虫に花粉を遠くの仲間に確実に届けさせるというメリットがあります。このように、被子植物と昆虫は互いに依存し合う関係(共生関係)を持つことで、両方のグループは、繁栄したようです。
 

おわりに

 今までのことから、昆虫の種類がたくさんいるのはどうしてかまとめてみましょう。それは、多様な資源の利用と環境変化への適応がずば抜けて良かったことが理由のようです。
 昆虫は、翅を獲得したことで行動範囲が大きくに広がり、多様な棲み場所や食べ物などを利用できるようになりました。また、小さく成長が早いので世代交代のスピードも速くなり、地上の変化に富む環境や気候変化などに適応した種の出現(種分化)が素早かったことが大きな理由のようです。
 更に、環境への適応性や種分化能力の高さは、植物との競争や共生関係などお互いに影響を与え合うことで強められ、たくさんの種類を生み出したと考えられます。
(文責:菊田 融)

アクセス

札幌市北方自然教育園 (札幌市南区白川1814)
じょうてつバス 定山渓・豊滝方面 十五島公園前下車 公園内のつり橋を渡って徒歩約30分

参考文献・HP

  1. 札幌市教育委員会文化資料室 編, 1990, 札幌昆虫記,北海道新聞
  2. 鷲谷いずみ 大串隆之 編集, 1993, 動物と植物の利用しあう関係 シリーズ地球共生系5,株式会社 平凡社
  3. 水波 誠,2006,  昆虫 驚異の微小脳,中央公論社
  4. 虫を飼うための豆知識 http://www.afftis.or.jp/konchu/breeding/1_1.html
  5. 昆虫ワンダーランド(愛媛県総合科学博物館) http://www.scimuseum.niihama.ehime.jp/special/konchu/data/kon/indexa.htm


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