陽のめぐみ 〜札幌市円山動物園〜


札幌の市街中心「大通り」から地下鉄東西線の宮の沢方面へ3つ目の駅が「円山公園」です。北海道神宮円山公園は、国の天然記念物に指定されたカツラやミズナラ・シナ等の原始林が囲む小高い山、円山(まるやま)の麓(ふもと)にあり、街の近くとは思えないほど緑あふれる所です。
円山公園の駅から坂道を歩いて約15分(バスで8分位)、広大な円山公園の一角に札幌市円山動物園があります。ほ乳類・鳥類・爬虫類(はちゅうるい)あわせて約200種、1,000点以上の動物と、そのほか昆虫がいっぱい飼育されています。

  • マサイキリンの「ユウマ」くん。 おいしい木? (撮影:2005/10/26 提供:田中 舞さん)


写真やテレビ・ビデオとは違い、同じ時間と空気の中で見る動物達は、大きさや形、立体感、ちょっとした仕草(しぐさ)、におい、面白い表情などを直接感じることができるため、生き物であることがより強く実感されます。

動物園は、レクレーション施設としてだけでなく、動物と人との関わりや環境についても、動物を通じて知ったり考えたりしてもらう所です。


自然を生かした環境にやさしく地球温暖化の防止にも役立つ、円山動物園の取り組みの一つを、ご紹介しましょう。それは、正門から入ると直ぐ左にある動物科学館の屋上の太陽光発電施設「てるてる発電所*1です。


屋上のキラキラ光る太陽電池は5KW(面積38㎡)の発電能力*2を持っています。地球温暖化の原因となる二酸化炭素の量を、年間約2.38トン程減らします。これは、300本のブナの木が1年かけて吸収する二酸化炭素と同じ位の量です。
屋上で発電した電気は、動物科学館で動物の卵を孵化(ふか)させる孵卵器や、ひよこの飼育器などに使われています。

  • 動物科学館「ひよこ」の飼育器 (撮影:2005/10/26 提供:田中 舞さん)

  • かわいい「ひよこ」 (撮影:2005/10/26 提供:田中 舞さん)

  • 動物科学館 発電中の表示パネル (撮影:2006/02/25)

  • 動物科学館の前に設置の「ソーラーくまちゃん」 (撮影:2005/10/26 提供:田中 舞さん)


さて、科学館の前には「ソーラーくまちゃん」と呼ばれる人形が設置されています。「ソーラーくまちゃん」は、皆さんが近くを通ると「声」で太陽光発電の案内をしてくれます。


太陽光発電とは、太陽からの光エネルギーを直接電気エネルギーに換えることです。使われる太陽電池は、プラスに帯電するP(ポジティブ)型とマイナスに帯電するN(ネガティブ)型と呼ばれる性質の異なった半導体物質*3を張り合わせた薄い板型の構造で、ソーラーパネルとも呼ばれます。
太陽電池の表面に光を当てると、この半導体の間にプラス(正孔)とマイナス(電子)が発生します。プラスはP型、マイナスはN型の半導体に集まり、両極にはっきり分かれることにより、電池としての機能が整います。2つに分かれたプラスとマイナスの間に電圧(電位差)が発生し、半導体が「電池」になります。この2つのP型とN型での電極を電線と電球(抵抗)でつなぐことで、乾電池と同じように「電気」が取り出せます。
日本では一般に、太陽「電池」と呼ばれますが、電気を起こす発電機であって、乾電池のように電気を蓄えて置くことは出来ません。電気を蓄える充電池とあわせると、安心して使うことができるようになります。

  • 発電の仕組みのイメージ


ヒトを含め動物は、他の動物や植物を食料としていて、植物は太陽の光エネルギーを使って水と二酸化炭素から、でんぷんなどの栄養素と酸素を作っています。つまり、この円山動物園の動物たちもみな、太陽電池が太陽エネルギーを利用して電気エネルギーを作り出すのと同じように、太陽の恵みによって生きているのです。

【住所】
札幌市円山動物園  札幌市中央区宮ヶ丘3番地1

【公式サイト】
http://www.city.sapporo.jp/zoo/

【参考資料】
さっぽろ文庫92 円山動物園 北海道新聞

【取材協力】
円山動物園 酒井 昌昭 様 宮本 繁貴 様

【参考】
新エネルギー財団
http://www.nef.or.jp/index.html
独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 ネド キッズページ
http://www.nedo.go.jp/kids/index.html

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【てるてる発電所】の母体となったNPO法人
特定非営利活動法人)ひまわりの種の会
http://himawari.her.jp/
「なぜ動物園に太陽光発電所なのでしょうか?」動物園は、年齢を問わず多くの市民が訪れます。「自然生態系」と「地球の温暖化」と言う「地球環境」を考えるのに最適な場所ではないかとの発想からなのです。とのことです。

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オマケ:熱帯鳥類館では、飼育されている南の島の鳥達の他に、天然のスズメ(笑)も飛び交い、ひとなつこいラッパチョウが子犬の様に、歩く前後に、ついてきます。

(写真の一部・文・図 荒瀬 美由紀) 最終更新:2006/03/30 Ver 1.0

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*1:【てるてる発電所】880名の市民と市内20の企業、7つのNPOと地球環境基金によりソーラーパネルを設置。2005年10月23日より本稼動。

*2:【5KW(面積38㎡)の発電能力】ソーラーパネルは、65枚。おおよそ住宅二戸分を賄う発電能力です。地球に到達する太陽光エネルギーは、快晴時の正午付近で1KW/㎡と言われています。

*3:半導体】電気を通しやすい「導体」と電気を通さない「絶縁体」との中間の性質を持つ物質。