血圧測定が出来るわけ 〜北海道大学病院〜
地下鉄南北線北12条駅を降り、北大通りを北に向かって歩いていくと、北海道の中心的医療施設、北海道大学病院があります。
イチョウ並木から見た北海道大学病院
(2006年9月4日撮影)
病院には出来る限りお世話にはなりたくないものです。また、散歩の途中にぶらっと立ち寄るところでもありません。そこで、健康な方も気軽に健康をチェックできるものということで、血圧測定について少し物理学的にみてみましょう。
血圧とは、心臓の拍動により血液が全身に送られるときの血管壁にかかる圧力です。この血圧のおかげで、人間は重力に対抗して血液を全身にいきわたらせることができ、酸素と二酸化炭素の交換と運搬、栄養物や老廃物の交換と運搬、さらには体熱の運搬が出来ます。心臓は収縮と拡張を繰り返しているので、収縮時と拡張時の血管壁にかかる圧力は違ってきます。これらをそれぞれ収縮期血圧(上の血圧)、拡張期血圧(下の血圧)といいます。
血圧を測定されたときの経験を思い出してみてください。
腕に布を巻かれて、腕が締め付けられて、看護師さんが聴診器で何かを聞いて、締め付けがだんだん緩んで、おしまいです。
血圧測定中の写真(2006年9月1日撮影)
看護師さんはいったい何を聞いているのでしょう?
じつは、聴診器で拍動音を聞いています。この音は発見者の名前をとってコロトコフ音といいます。音が出る理由については「血管壁の振動音(血管が振るえる音)」であるとか、「血流が渦を巻くことによる乱流音」であるという諸説があります。ちなみに、圧力をかけずに腕の動脈に聴診器を当てただけではこの音は聞こえません。
次の図を見てください。縦軸が血圧で、横軸は経過時間です。
腕を締め付けている圧力が下がるにつれて、心臓が収縮したときの血圧が締め付ける圧力を上回ります。そこで一瞬だけ血液が流れるので、聴診器を当てていると拍動音が聞こえるのです。このときの血圧が収縮期血圧です。
さらに締め付けている圧力が下がっていくと、血圧のほうが締め付ける圧力よりも上回っている時間が長くなり、血流量も増加します。そのため、拍動音がより大きく聞こえてきます。
どんどん締め付ける圧力を下げていくと、血液は何の妨げもなくスムーズに流れることが出来るようになるので、ついには拍動音は聞こえなくなります。このときの血圧が拡張期血圧です。
このように、看護師は血管の小さな音を聞いているので、血圧測定中はなるべく周りでうるさくしないようにすることが必要です。しかし、今は電子血圧計が家電量販店で安く手に入れることができ、血圧測定が簡単に自分でできるようになりました。電子血圧計は音の有無の感知ではなく、圧力センサーが感知する圧力の変化から推測した値を血圧値として表示します。
ところで、あなたの血圧は?
血圧の正常値は成人で収縮期血圧が90から140mmHg、拡張期血圧が90以下です。血圧の正常値は年齢とともに変化します。赤ちゃんでは収縮期血圧が100mmHg、高齢になるにつれて血圧は高くなる傾向があります。個人差もあるので、普段から自分の血圧を知っておくといいかもしれませんね。
「全身状態とバイタルサインの測定」信州大学医学部、2001年
(文・写真 伊藤紀代)
アクセス
地下鉄南北線北12条駅下車 徒歩10分