猫ウォッチング 〜ねこぽろ〜



東急ハンズ札幌店7階、ペッツリビン札幌店内にあるネコとの遊び場「ねこぽろ」。

  • ねこぽろ入り口 (撮影:2005/12/3)


有料で室内に放し飼いされた10匹ほどのネコと時間無制限で遊べます。

  • ねこぽろ室内 (撮影:2005/12/3)


このネコさんたち、なかなかクールな御仁で筆者には目もくれず
(そこが彼らの魅力なのですけれども…)
筆者はねこじゃらしを空しく振り回していました。

  • ねこじゃらしを振り回すがかまってもらえない筆者 (撮影:2005/12/3)


しかし、ここで過ごした30分程で、ネコの様々な性質を観察できました。


まずは、すぐれた聴力。
ねこじゃらしで床を小さく叩いただけで、数匹のネコがこちらを振り向きました。
ネコは人間の十倍の10万ヘルツもの範囲の音を聴き分けられます。
(ネコの可聴周波数は60-100,000Hz、人間は20-20,000 Hz)
小さく短い音も鋭く感知し、数m離れたコオロギの足音も聴き取れます。

  • 耳を立てているのは音が気になるしるし (撮影:2005/12/3)


一方、ネコの視力はあまり良いとは言えません。
ネコがよく見える範囲は2mから7mまでで、
75cm以内の物体にはうまく焦点をあわせることができないのです。
しかし、狩りをする動物だけに、動く物には鋭く反応します。
ネコに襲われたネズミは急に静止することがありますが、
ネコは飛び掛る直前に頭をすばやく振り、視力を良くしようとします。

  • あまり近くのものは見えません (撮影:2005/12/3)


次に、すぐれた脚力。
部屋をすばしこく駆け回る彼らの速度は、最大で時速50kmになります。
また、ネコたちは天井近くに張られた渡り廊下へひょいひょいと飛び乗っていました。

  • 渡り廊下に乗ったネコ (撮影:2005/12/3)


ネコのジャンプ力は体長の7倍。
170cmの人間が、助走なしで鎌倉の大仏を飛び越えるほどの跳躍です。


また、ネコ同士はなんとなくお互いに距離を保ちながら行動していました。

  • お互いに目をあわせようとしないネコたち (撮影:2005/12/3)


ネコには本来半径200mの縄張りが必要と言われています。
目的の場所に他のネコがいたら目をあわさずに立ち去るのがルール。
目をあわせれば最後、ケンカが勃発します。
人口(猫口?)密度が高い場所では、独自のルールを編み出してうまく生活しているようです。
夜中の公園や路地裏で、ネコの集会を見たことはありませんか?
これは、ネコたちが自分の町の住人を確認しあうためと考えられています。
「ねこぽろ」も、ネコがすむ環境としてはずいぶん狭い場所ですが、
目をそらしたり時々ケンカしたり、あるいはじゃれあったりしながら、
お互いの生活圏を保っているようでした。


以上のような性質は、ネコが狩りをする動物であることに由来しています。
ネコの祖先は、5,6千万年前に生息していた
ミアキス」という食肉哺乳類だと考えられています。
ミアキスは、実はイヌやアシカ、クマなど様々な動物の祖先でもあります。
海に出て行ったのがアシカ、草原にはイヌ、森林を選んだのがネコ。
広い草原では獲物が逃げやすく仲間が必要なので、イヌは群れを作るようになりました。
一方、森の陰から獲物を襲うようになったネコは単独行動を選びました。
遠くの獲物をとらえられるように、視力や聴力が鋭く研ぎ澄まされ、
こっそり獲物に忍び寄れるように、足の裏には柔らかい肉球ができました。
標的を定め瞬時に獲物に飛び掛り、鋭い歯で脊髄を切断して息の根を止めます。

  • 高い所からこちらを見ているネコ (撮影:2005/12/3)


ネコが初めて人間に飼われたのは紀元前2500年ごろ。
エジプトでリビアヤマネコがネズミの駆除のため飼われるようになりました。
日本には6世紀頃、紙がネズミに食われないよう、
中国からの仏教経典と一緒に輸入されたそうです。


自由な単独行動を好むネコが、大人しく人間に飼われるのはなぜでしょう?
人間はネコをかわいがって癒されますが、ネコのほうも人間を利用しているのだと言う人がいます。
ネコをやさしく撫でてやりましょう。

  • ネコを撫でる人 (撮影:2005/12/3)


マッサージによってネコの副交感神経は刺激され、リラックスしてきます。
さらに安心してくると腸の蠕動(ぜんどう)運動が活発になり、
筋肉が弛緩して、血圧も脈拍も落ち着いてきます。
ネコが気持ちよさそうに目を閉じていると、
う〜ん、撫でているほうも眠くなってきちゃいますね。
筆者は撫でる隙も与えてもらえませんでしたけれど…
(*1.副交感神経:刺激に対して反応する、自律神経系のひとつ。
          副交感神経が働くと、身体がリラックスする
 *2.蠕動運動:腸の、消化物を輸送する動きのこと)


進化の研究で有名なチャールズ・ダーウィンは、動物にも確かに情緒があり、
情緒によって他の動物とコミュニケーションをとっていると考えました。
ネコは人間を観察し、人間とつきあう術を身につけているようです。
こちらからもじっくり奴らを観察してみようではありませんか。

  • ネコに手を伸ばす (撮影:2005/12/3)


(文・写真 タナカマイ)最終更新:2006/3/16 ver.1.2

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【参考文献】

  1. 『ネコと暮らせば〜下町獣医の育猫手帳』野澤延行 集英社新書
  2. 『オックスフォード動物行動学事典』デイヴィッド・マクファーランド どうぶつ社
  3. 『犬と猫の行動学』ヒトと動物の関係学会 学窓社