街をみつめるハッチャム・エプイの三角点 〜三角山〜

札幌駅から西に車で20分も走ると中央区と西区の境目に小高い正三角形の小山が見えます。これが、アイヌ語ハッチャム・エプイ(花のつぼみの形をした・かわいい山)の異名を持つ通称三角山です。街のどこからでも見ることができ、正式名称は、琴似山といいます。
この山は、都心部にありながら豊かな植物群に恵まれ、エゾリスシマリスなどの小動物の貴重な生息地でもあります。夏は、オオウバユリ。秋は、山葡萄やツリバナが登山者を迎えます。311mという標高から、気軽に楽しめるハイキングコースとして、冬も自然の催しの場として、多くの愛好家に支持されています。
ふもとから山頂まで美しく飛ぶキアゲハは、この山のシンボルです。7月23日には臨時郵便局が設置され、山頂からこのやまのシンボルキアゲハの記念スタンプ入りの郵便を出すことができます。

  • 山の手草ぶえ公園からの三角山 (撮影:2005/12/08)


山の手登山口から緩やかな白樺林を抜け険しい坂道や分岐点を行くこと40分。ほそい坂道から山頂の標識が見えます。

  • 山頂付近 (撮影:2005/11/14)


山頂にたどり着くとそこには小さなひろばとベンチがひとつ。木々の間からの東の方角には、広大な札幌の街並が広がります。西にはそれとは対照的な大倉山、小別沢の山々が広がります。

  • 山頂からの札幌の街並み。 右手に見える小山は円山です。(撮影:2005/11/14)


ひろばの中央に一等三角点の標石が砕石に囲まれてあります。
かつて、明治31年、一等三角点の本点が三角山に設置されました。
三角点とは国土の正確な地図を作ることを目的に明治から大正時代に行われた測量で三角測量という方法で設置された基準点のことです。
三角点には一等から四等までの等級がありそのうちの一等三角点は、北海道に224箇所あります。それは、開拓の歴史とともに標石という石の杭であらわされています。

  • 三角山の一等三角点 (撮影:2005/11/14)


40kmごとに88箇所設置されている一等三角点本点の標石と25kmごとに補う136箇所の一等三角点補点の標石が北海道に示されました。
それは、主に測量する上で見通しのよい標高の高い地点が選ばれています。明治時代まだ原野だった札幌を切り開く技術の原点として、三角点は、大いに活躍していたのです。

  • 三角測量の原理


現在は、技術の進歩によって三角測量という方法は、光波測距儀*1GPS測量*2に変わり、用いられなくなっています。

三角山は、北緯43度3分18秒121、東経141度17分27秒886、標高311.12mであらわされます。
原野の頃から札幌の街の変遷をみつめてきた三角点、今は平地でひっそりと隠れた三角点*3ちょっと探してみませんか。


(文・撮影・図:北守敦子) update:2005/12/30 ver.2

【アクセス方法】

  1. 山の手側入り口:地下鉄西28丁目→山の手4条11丁目(バス)→0.2km【緑ヶ丘療育園目指す。】(徒歩3~4分)→入り口パーキング有(おススメNo1)
  2. 宮の森入り口:地下鉄西28丁目→宮の森4条10丁目(バス)→0.4Km(徒歩8分)→入り口
  3. 大倉山展望台入り口:地下鉄円山公園→大倉山競技場 入り口(バス)→0.5km(徒歩10分)→大倉山ジャンプ競技場(競技用リフト5分)→大倉山展望台→入り口
  4. 小別沢入り口:地丘鉄琴似→福井8丁目(バス)→1.2km(徒歩25分)→入り口


【参考資料】

  1. 札幌市西区役所ホームページ (web)
  2. 国土地理院 (web)
  3. ハイキングクラブのんびり 三角点を知ろう (web)
  4. 北海道の山情報 TOSHIYANの山物語 山の一等三角点 (web)
  5. 『大倉山物語』さっぽろ文庫96 札幌市教育委員会編 北海道新聞社 2001
  6. 『みんなの三角山散策マップ』  札幌市環境局緑化推進部緑の保全

*1:【光波測距儀】光波を用いた測定機器。原理は、高周波変調光を測点地に設置した反射鏡にむけて発射しその反射鏡からの反射光との波長のずれを測定して距離を求める。

*2:GPS測量】人口衛星からの電波を受けて測量する方法。受ける電子基準点は全国で1200箇所ある。車のカーナビゲーション地殻変動の測定にも使われている。

*3:【札幌の平地の三角点】札幌基線北端点(創成川下水処理場北区麻生布8−1)・札幌基線南端点(東区北11−東1付近)詳しくは、http://uenishi02.at.infoseek.co.jp/m120hokkaidocenter.html