単なる単位の簡単物語〜JR札幌駅〜






 札幌駅の南側に気温を表示する大きな電光掲示板があります。




筆者は通勤で毎朝この前を通ります。冬や夏には、朝から見るのも嫌になるような気温が表示されることもありますが、街中や道路沿いの気温表示は、路面が凍結しているかどうかの目安として、特に冬の運転には有難い情報です。



 この気温や温度を日本では[℃](摂氏度)で表します。アメリカなどでは[ºF](華氏度)*1を日常で使用しています。さらにまた物理の世界では、温度は[K](ケルビン*2で表します。この[K]という単位は、日本も加盟している国際度量衝総会(メートル条約)で定められた基本単位(SI単位)で、加盟国では原則として基本単位を基にした単位系(SI単位系)ですべての物理量を表さなければいけないのです。しかし現実にはSI単位系だけを用いると、日常生活に不便や混乱があるので慣用的単位も使用されています。基本単位は全部で7個あります。[K]以外の基本単位は、[m](メートル、長さの単位)、[kg](キログラム、質量の単位)、[s](秒、時間の単位)、[A](アンペア、電流の単位)、[cd](カンデラ、光度の単位)、[mol](モル、物質量の単位)です。


 それぞれの基本単位の定義は科学(特に測定技術)の進歩とともに変化しています。例えば長さの基本単位である[m]は、最初メートル原器という金属製の棒を作成して基準としていました。現在では、光が真空中を1秒の299792458分の1の時間に伝わる距離と定められています。


 日本では1991年に日本工業規格(JIS)が完全に国際単位系準拠になりました。それにともなって、身近なところでも記載がかわりました。それ以前は車のカタログではエンジン出力に「馬力」という表示がされていました。しかし最近は「kW」で表されています。また天気予報で以前は気圧を「ミリバール」で表していました。現在では「ヘクトパスカル」で表しています。


 慣用的単位には用途を限定して正式に認められているものもあります。例えば、ダイヤの「質量」はカラット*3が用いられます。カラットは宝石の質量を表す時だけ使用が認められています。自動車の「速さ」も本来なら、基本単位の組み合わせで「秒速何メートル、[m/s]」と表さなければいけませんが、私達は日常「時速何km、[km/h]」と1時間に何km進むかで表しています。これは[秒]と[m]だけでは計算の桁数がどんどん大きくなって不便だからです。皆さんは「100kmの距離を時速40kmで進むと何時間かかるか?」という問題の答えは2.5時間(2時間30分)とすぐわかりますね。この問題を[秒]と[m」に置き換えて計算してみてください。基本単位では不便なことがすぐ実感できると思います。


 普段全く意識しない単位にも意味や変遷の歴史があるのです。単位について調べてみるのも面白いものですよ。


 えっ?最近は単位が気になってしょうがないですって?そういえば学生さんは単位がかかった季節ですものね。


(文、写真:ひるあんどーん)


参考:理科年表

アクセス
JR札幌駅または地下鉄南北線札幌駅からすぐ

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*1:[℃]と [ºF]の関係はt[ºF]=1.8×T[℃]+32で表されます。人間の一般的体温36.5 [℃]は97.7[ºF]になります。

*2: [℃] と[K]の関係は0 [℃]=273.15[K]。また温度差1[℃]=1[K]です。

*3:1[カラット]=0.2[g]=0.0002[kg]。