おいしい札幌の水道水!〜白川(しらいかわ)浄水場〜
白川浄水場は、札幌市南区藤野から豊平川にかかる白川橋を北側に渡ったところにあります。この浄水場は、豊平峡ダムと定山渓ダムを水源として、給水能力が1日あたり65万立方メートルあり、札幌市全体の約80%の水道水を供給しています。これは、札幌ドームが2日半で満杯になる量に相当します。
ところで、札幌の水道水はおいしいという評判です。
(社)札幌消費者協会が、平成13年に札幌市の水道水と市販のミネラルウォーター類・海洋深層水を飲み比べておいしさを調べました。調査した34銘柄のうち『札幌市の水道水よりおいしい』とされたのは4銘柄しか無く、札幌市の水道水が市販のミネラルウォーター類に引けを取らないおいしさと評価されました。
おいしい水とは?
水をおいしいと感じるのは、個人の感覚や飲むときの条件によって左右されるので、科学的に説明するのはなかなか難しいです。しかし、それでも水が「おいしい」とか「まずい」と感じるのは、一般に水に含まれる物質に大きな影響を受けているようです。
雨や雪は、地表に降った後、表面を流れ去るだけでなく地中にも浸み込んでいき、いろいろなミネラル成分(カルシウム,マグネシウムなど)を溶かし込みます。この浸みこんだミネラル成分が水の味に大きな影響を与えています。
1985年に旧厚生省は、「おいしい水研究会」をつくり、おいしい水とはどんな条件かという答申を出しました。その結果、下記の要件が示されました。
項目 | 数値 | 味への影響 | |
---|---|---|---|
蒸発残留物(ミネラル) | 30〜200mg/l | 主にミネラルの含有量を示し、量が多いと苦味などが増し、適度に含まれるとこくのあるまろやかな味がする。 | |
硬度 | 10〜100mg/l | ミネラルの中で、量的に多いカルシウムの量が低いとくせがなく、高いと好き嫌いがでる。マグネシウムの多い水は苦味を増す。 | |
遊離炭酸 | 3〜30mg/l | 水にさわやかな味を与えるが、多いと刺激が強くなる。 | |
過マンガン酸カリウム消費量 | 3 mg/l以下 | 有機物量を示し、多いと渋みをつけ、多量に含むと塩素の消費量に影響して水の味を損なう。 | |
臭気度 | 3以下 | 水源の状況により、様々な臭いがつくと、不快な味がする。 | |
残留塩素 | 0.4mg/l以下 | 水にカルキ臭を与え、濃度が高いと水の味を悪くする。 | |
水温 | 最高20度以下 | 夏に水温が高くなると、あまりおいしくないと感じられる。冷やすことにより、おいしく飲める。 |
1985年,厚生省,「おいしい水研究会」
水の硬さとは?
この内、水の味に大きな影響を与えていると注目されているのが硬度です。硬度とは、ミネラル成分の内、多く含まれるカルシウムとマグネシウムの量を測定したもので、水に溶けているカルシウムとマグネシウムの量を炭酸カルシウムの量に換算した量で計算されます。
* [硬度の求め方] {(カルシウム量×2.5)+(マグネシウム量×4)}×10
この内、1リットル中100mg以下が軟水、200mg以上が硬水とされています。日本の水の場合は、ほとんどが軟水になります。一般的に硬水は、口に含むと引き締まったような味がし、軟水は口当たりが柔らかくさわやかな感じを受けるようです。
ヨーロッパなどの大陸では、水が地下での滞留時間が長く、そのためにカルシウムやマグネシウムの含有量が多くなり硬度が200〜400mg/lもあります。それに対して、日本の水は一般に硬度が低く20〜70mg/lの軟水が主流です。
食文化と水の関係
水の硬度の違いは、料理に大きな影響を与えています。
先ほど示したように、ヨーロッパでは硬水が主流です。硬水に多いカルシウムやマグネシウムはタンパク質を硬くする性質があります。そのために、硬水で肉料理をすると肉が硬くなり味が落ちます。また、硬水で野菜を煮るとゴワゴワしておいしくありません。そこで、ヨーロッパでは、水を直接使わず、牛乳やワインなどで長時間かけて煮たり、油で炒める料理が多くなりました。
一方、日本の水は軟水なので、そのまま調理に水を使うことができます。そこで、食材への加熱時間が比較的短い、煮物、汁物、ゆで物、吸い物といった調理方法が発達したようです。
水がおいしいのは、雪のおかげ!
札幌の水道水がおいしい理由は、冬に大量に積もる雪と関係があります。山や森に積もった雪は、春からゆっくり融けて地面に浸みこみ地下水になります。この地下水が長い時間をかけて、ほどよくミネラルを含んだ水として、豊平川の水源となっていきます。さらに、この地域は、支笏洞爺国立公園や国有林野内にあり、取水地点上流にはほとんど人が住んでいないため、消毒のための塩素を大量に使う必要がありません。札幌の水がおいしいのは、これらの雪と森林をはじめとする「自然の恵みのおいしさ」と言えるでしょう。
札幌市は、このおいしい水を多くの人に知ってもらうため、水道水を500mlペットボトルに詰めて「さっぽろの水」として販売しています。
(文 菊田 融)
参考文献・HP
- 「科学でみなおす 体にいい水おいしい水」,岡崎稔・鈴木宏明著 ,技報堂出版
- 「エコロジカル・ライフ 飲み水を考える」,鈴木紀雄著 ,(社)家の光協会
- 水web, http://www.secom-alpha.co.jp/mizuweb/
- ようこそ札幌, http://www.welcome.city.sapporo.jp/feature/03_06/water_1.html
- 水道水およびミネラルウォーター類に関する調査, http://www.city.sapporo.jp/suido/c04/04_2.htm
- 札幌市水道局さっぽろの水 http://www.city.sapporo.jp/suido/c24/index.html