ジンギスカンの魅力 〜北海道大学 エルムの森〜





北海道大学の博物館横に広がる「エルムの森」では、週末になると大学生のグループがジンギスカンをしています。

  • たくさんのグループがジンパを楽しむ(撮影日:2006年6月24日)



 エルムの森ではジンギスカンやバーベキューといった火を使うレクリエーションが認められていて、炭を捨てる筒も設置されています。

  • 炭を捨てる筒(撮影日:2006年6月26日)



ジンギスカンとは羊肉を焼く焼肉の一種で北海道の名物料理として有名です。
浅い帽子のような中央が盛り上がった形の鍋を使って野菜と一緒に羊肉を食べるスタイルが一般的ですが、ジンギスカン鍋を使わなくても、羊の肉を焼いてたべることを「ジンギスカン」とよんでいます。

  • ジュージューと焼ける羊肉と野菜(撮影日:2006年6月24日)



大学構内でジンギスカンを楽しむ学生達の姿は、観光名物ともなっているようです。
 全国的には屋外で牛肉や豚肉を使ったバーベキューを食べることが多いようですが、北海道では断然ジンギスカンが人気です。北海道大学の学生は、ジンギスカンを外で楽しむことをジンギスカン・パーティーの略で「ジンパ」とよんで親しんでいます。


今回は、ジンギスカンで食べられている羊肉の成分という切り口から、ジンギスカンの魅力を探ってみました。


【羊肉の魅力は豊富な鉄分】
豚肉や牛肉と羊肉とを比較してみると、まず含有鉄分量の違いに目がいきます。
鉄分は私たちにとって非常に重要なはたらきを持つ成分です。
その鉄分が100g中の肉にどれだけ含まれているかを比較してみると豚もも肉には0.5mg、牛もも肉には1.0mg含まれています。対して、子羊(ラム)のもも肉には2.0mg、羊肉(マトン)のもも肉には2.5mgの鉄分が含まれています。

  • 含有鉄分量を比較したグラフ

ちなみに鉄分が多いことで有名なレバーは7.7mg。レバーにはすこし及びませんでしたが、赤肉ではトップクラスの鉄含有量です。



【鉄は赤血球作りに不可欠な成分】
なぜ私達の体に鉄分が必要なのでしょうか。
私達の血液には赤血球という「酸素の運搬係」の役目を持つ弾力性のある細胞があります。私達が吸った空気はいったん肺に入ります。赤血球は肺に入った新鮮な酸素と結合した後、体中をめぐり、その弾力性を生かして細い血管にも入り込んで、隅々までいきわたります。目的地についた赤血球は酸素との結合をとき、組織に酸素を提供するのです。
赤血球の主成分はヘモグロビンというタンパク質です。このヘモグロビンを作るときに鉄が必要なのです。体内に鉄分が少ない状態ではヘモグロビンができなくなってしまい、正常に赤血球をつくることができなくなってしまいます。
酸素の運搬係が不調になったり数が足りなくなったりすると、体のあちこちで酸素が足りなくなり体調不良(貧血)を起こしてしまうのです。


羊肉は、特に貧血を起こしやすい女性にとって体にうれしい食べ物ですね。筆者は鉄分の多いレバーが苦手でどうしても食べられないのですが、羊肉ならどれだけでもたべられますので、羊肉で鉄分補給をしたいところです。
さらに、鉄分はビタミンCと一緒にとると吸収率がぐんとよくなります。ビタミンCたっぷりの野菜と一緒に鉄分たっぷりの羊肉を食べるジンギスカンは、理にかなったバランスのよい食事といえるかもしれません。


【北海道とジンギスカンのつながり】
北海道の人にジンギスカンが愛されている歴史的な背景も、少し調べてみました。
ジンギスカン普及の発端は明治時代までさかのぼります。
第一次大戦後、軍服の材料につかう羊毛を確保するために政府は「綿羊百万頭計画」を推進しました。羊毛の自給自足を目指したのです。政府は羊の飼育を奨励し全国5箇所に種羊場をおきました。そのうち二つが北海道に設置され、北海道は羊飼育の中心となりました。この頃、種羊場で羊の毛だけではなく肉も利用しようという試みがはじまり、提案メニューのひとつとしてジンギスカンが誕生したそうです。
当初は臭みが強くあまり受け入れられませんでしたが、第二次大戦後、食糧難だったことと臭みを緩和するタレの改良によってジンギスカンがいっせいに普及したのです。


【おいしく食べて心とからだのメンテナンス!】
ジンギスカンは北海道という土地にしっかりと根付いた、栄養たっぷりの食事ということがわかりました。
最近雨の多い北海道ですが、はれた週末には友達を誘って一緒にビールとジンギスカンで乾杯! 心のリフレッシュもかねて「ジンパ」を楽しみたいと思います。
(文・写真 宮本 朋美)

【アクセス】

北海道大学 総合博物館 向かって左側に広がる森


【住所】

  • 北10条西8丁目



【参考文献】

  1. 北海道新聞HP 「Oh!さっぽろ」
  2. 食品成分データベース
  3. 北海道新聞発行 道新ポケットブック