映画で科学を考える 〜蠍座〜



札幌駅前に、蠍座(さそりざ)という小さな映画館があります。

  • 蠍座外観 (撮影:2006/1/21)

支配人さんが、自分が観た映画の中で良いと思った作品だけを上映しています。
内装にもこだわりが見え、コーヒーの良い香りが漂うロビーでは
テーブルに季節の花が飾られていたりと、居心地の良いカフェのような雰囲気です。


支配人さんは動物が好きなのだそうで
ディープ・ブルー」や「皇帝ペンギン」などの生物ドキュメンタリーも
これまでたびたび上映されています。


■映写機の歴史 ※写真手配中


映画は、映写機によってスクリーンに映し出されます。
蠍座で映写機を直接見ることはできませんが、
劇場で後ろを向くと、こちらにレンズが向いているのが見えます。


光を使って絵を拡大し映し出す、映写機の先駆は
1646年にスイスの神父、アタナシウス・キルヒャーが作った幻灯機です。
この17世紀には、影絵を映し出す影絵劇場が流行しました。


絵を動かして映像を楽しむ試みも昔から行われていました。
網膜の残像現象を利用したゾエトロープ(驚き盤)などがその例です。
網膜とは、眼球の中の、光を受け感覚を生じる視細胞が並ぶ薄い層のこと。
視細胞には、桿体(棒型)細胞と錘体(コーン型)細胞の2種類があります。
暗い場所で物を見るときには桿体細胞が働き、明るい場所では錘体細胞が働きます。
錘体細胞は明るい光が当たるとしばらくもとに戻れず、
眩しいものを見つめた後はその形がしばらく残って見えます。これが残像です。


19世紀半ば、これらは科学玩具として流行しました。
1892年にはフランスの自然科学者、エミール・レノーが
ゾエトロープに映写装置をつけたプラキシノスコープを作製、上映し
世界最初のアニメーションといえる興行を行いました。


写真を動かして見れる機械を最初に発明したのは、発明王エジソンです。
1893年エジソンが作ったキネトスコープは、
覗き穴から映画が見られる、映像からくり箱でした。
その翌々年、リュミエール兄弟
箱の中ではなく、スクリーンに映し出して大勢で楽しめる映像装置を作り、
世界の人々を驚かせました。
1897年には日本にも持ち込まれ、「活動写真」として広まったそうです。


■映写機の仕組み


  • 映写機 (撮影:2005/10/19)

映写機は、レンズ、フィルム、シャッターがあるという点で
カメラなどの撮影機とほとんど同じ仕組みになっています。
違うのは、フィルムを映し出す光源があるということです。


映画のフィルムは、通常1秒に24コマが映し出されます。
映写機は、間欠輪動装置という装置を用いて
フィルムをすばやく正確に動かしています。


フィルムを大きく映し出すために、映写機では強力な光源が使われています。
強い光に照らされたフィルムが、熱くなって溶けてしまわないように
風を送り込んでフィルムを冷却する装置も取り付けられています。


(文・写真 タナカマイ) 最終更新 2006/5/31 ver.1

【住所】

 

【アクセス方法】

  • JR札幌駅北口から北へ徒歩3分


【参考文献】

  1. 『大百科事典』平凡社