スケートの圧力で氷が水になる? 〜真駒内アイスアリーナ〜


 日本中が喜びに沸いた、トリノオリンピックフィギュアスケート女子、荒川静香選手の金メダルも記憶に新しい。オリンピック前にはスルツカヤ選手を破りGPファイナル優勝した浅田真央選手が話題だった。オリンピック中も4回転を飛ぶことで人気のミキティこと安藤美姫選手に期待が集まった。今回のオリンピックの話題はフィギュアで始まってフィギュアで終わったような印象がある。
 ということで今回は話題のネタとして、スケートについて書いてみようと思う。真駒内に1972年の札幌オリンピックで使われたスケート場「真駒内アイスアリーナ」がある。冬の間はスケート場、夏は各種のスポーツに利用されている。



  • 入口にはオリンピックのマークも残っている (撮影:2006/3/5)


 ところで「スケートが何故滑るか?」という話題については、実はいまだによくわかっていないらしく、現在でも研究が進められている。圧力で水が溶けるためとする説や、摩擦で溶けるためという説などがあるそうである。(詳しくはリンクを参照) この記事では比較的一般に信じられている、圧力による説を紹介することにする。


 圧力による説は、スケート靴の鋭い刃で圧縮することで、氷が水になり滑りやすくなるというものである。氷は圧力が高くなると水になるという性質が根拠である。下図に水の状態図を示す。この図は水が圧力と温度でどのような状態になるかを示している。図を見ると、1気圧(大気圧)では0℃が固体と液体の境界(融点)、100℃が液体と気体の境界(沸点)になっている。0℃や100℃などとキリのいい数字になっているのは偶然だろうか?実は、逆に「温度」の方の定義を、「水の状態変化」に合わせて決めているのである。


  • 水の状態図


 スケートリンクは、0℃より少し低い温度に設定されている。スケートの鋭い刃でリンクに体重をかけることにより、高い圧力が氷の表面にかかる。圧力が上がると図の赤い矢印で示したように、氷の位置から水の位置へ変化する。それによってできた水が摩擦を減らすため、滑るようになるという原理である。


 ところで図をみると、水が固体になるか、液体になるか、気体になるかは「温度」と「圧力」によって決まることがわかる。例えばよく知られているように、高い山の上だと圧力が低いので、100℃より低い温度で水が沸騰してしまう。また深い海の底などで圧力が高い場所だと、海底火山などで100℃以上でも水が液体のまま存在できる。水は非常に身近な物質であるが、いろいろな性質を持つのでいろいろな現象に深く関わっているのである。

【公式サイト】
真駒内アイスアリーナ
http://www.makomanai.com/icearena/


【リンク】


化学の質問ありまへんか。(スケートはどうして滑るのですか?)
http://www.chemistryquestion.jp/situmon/shitumon_kurashi_kagaku62_ice_skate.html


富山大学研究紹介 (スケートはなぜ滑るか)
http://www.toyama-u.ac.jp/jp/Academic/research/researcher/002_tsushima/



【参考資料】

「理化学辞典」岩波書店


(文・写真・図:宮下友則)最終更新:2006/5/16 ver.2.2