スキーと体の揚力で飛ぶ 〜大倉山ジャンプ競技場〜


 大倉山にスキーのジャンプ競技場がある。札幌オリンピックでも使用されたもので、現在でも大きな大会に使用されている。隣接してウインタースポーツミュージアムと、大倉山クリスタルハウスというレストハウスがある。


  • 図1 選手の体とスキー板を翼に似た形にして飛ぶ


 スキージャンプをしているところを横からみると、選手が板や体の形を飛行機の翼のようにしていることがわかる。(図1)その目的としては飛行機と同じく、揚力(ようりょく)を得ることで飛翔距離を伸ばすことにある。揚力とは、飛行機の翼などに作用する、上昇する力(図2)である。


  • 図2 水平に一定速度で飛ぶ飛行機に働く力(*1)


 図2に示してあるが、飛行機に作用する力は3つあり、1)エンジンによる推進力、2)重力、3)翼や機体に働く空気力、である。このうち、空気力は水平方向と垂直方向の力に分解でき、水平方向の力を空気抵抗、垂直方向の力を揚力と言う。この場合、同じ速度で水平に飛行しているため、水平方向の力も垂直方向の力もつりあっている。なお、空気力を揚力と空気抵抗に分解したが、これは中学では「平行四辺形の法則」、高校では「ベクトル」と習う、力を分解して理解する方法である。


  • 図3 落ちる軌跡(きせき)


 もし揚力が働かないとすると、図3のように選手は物体を投げたのと同じような軌跡を描いて落ちることになる。揚力が働くことで、遠くまで飛ぶことができる。


  • 図4 ジャンプ選手に働く力


 図4にジャンプ選手に働く力を示す。選手に働く力は、重力と空気力の2つだが、進行方向とその垂直方向の力に分解することができる。進行方向には推進力と空気抵抗、垂直方向では、揚力と地面に近づく力が働く。実際にはこれらの力は釣り合っているわけではなく、揚力よりも地面に近づく力の方が大きい。また、推進力と空気抵抗は、どちらが大きいかで加速するか減速するかが決まるのだが、TVで見てる限り私には確認できなかった。ひょっとしたら、同じくらいの力なのかもしれない。


 ところで、ジャンプでは向かい風の方が飛距離がでる。その理由は、揚力が働くためである。揚力は速度が速いほど大きいため、相対的な速度が大きくなる向かい風のときにより大きな揚力が得られるということである。また、選手は前につんのめるような形で、進行方向に対して大きな角度がつかないように飛んでいる。これは大きな角度がつくと流れがはがれて失速してしまうため、これを防ぐためである。以上のようにスキージャンプの選手は、飛行機の翼に似た形で飛んでいると考えることができる。


*1 航空機に働く空気力や重力は実際には点でなく面や体積に働く。そして、機体に働く重力をまとめた(積分した)位置を重心、空気力をまとめた(積分した)位置を空力中心という。

【公式サイト】
大倉山 http://www.sapporo-dc.co.jp/okurayama/


【参考資料】

「飛行力学」 前田弘 養賢堂
流体力学(1)標準機械工学講座」大橋秀雄 コロナ社
流体力学(2)標準機械工学講座」白倉昌明 大橋秀雄 コロナ社


(文・図:宮下友則)最終更新:2006/3/21 ver.1.1